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陽炎、蜻蛉 [昔語り]

夏の恋は陽炎かはたまた蜻蛉か、熱き地面から立ち昇る揺らめきの中の景色かこの世に本体を置きながら異界の世界への入り口を飛び回る、あの儚き虫のようなものか。それほど身を焼き尽くすほどの恋の経験はないかもしれぬ、しかし胸をこがすような想いは何度もある。不思議なものだが何時も何気なく傍にいる人が夏休みなどで長く会えなくなるとそれは寂しい、そしてその寂しさを恋と実感する、もしかしたらそれは恋ではない場合もあるのだがその時はその勘違いすら気が付かないほど恋に恋い焦がれる。私はこのタイプではない、どちらかと言うと休みの間に知り合った人のイメージを膨らませて勝手に恋い焦がれるタイプだろう。しかも、追いかけるタイプでもないから優柔不断な自分を責めながら振り向いてもくれぬ人に想いを寄せる。ところが、時々何を思ったか行動に出てしまうことがある。止めとけばいいものをと自分ではわかっているのだが止まらない。そんなことが3度ほどあった、ところがそんな時、神の悪戯か想いが通じてしまう事があった。自分ではうまくいかないからこそが夏の恋で、勝手に書いたシナリオが崩壊する。あわてて、ハッピーエンドに書き換えようとするのだが、もとよりそんなものが書けるはずがない。なんだかギクシャクしながら秋冬を迎える、そんなことを何度か繰り返して大人になって行った。
出会いはどこにだってあるけれどやっぱり何か自分から動かないと何も起きない。たとえ一人旅だって別に出会いなんて望んでいなくたって、ふっと自分に風が吹いたら一歩を踏み出せばいい、それだけのこと。陽炎を見つけるのも蜻蛉を捕まえるのも、夏にやってみればいい、ここしかない時間だから。
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