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思わせぶりに [昔語り]

高校生の頃仲の良い女の子がいた。ルックスもスタイルも決して万人向けとは言い難い娘だったけどなんとなく思わせぶりにな態度としぐさの可愛さで次々に同級生を振り向かせていた。私はと言えば仲がいい、けれども好き嫌いの関係にはなりそうもないと思っていた。ところがある寒い日の駅への帰り道二人並んで歩いていたらいきなり私の腕に手を絡めて、そのまま私のポケットに手を入れてきた。私は少しドキッとしたけれどそのまま駅まで歩いていった。同級生たちは私たちを見ながら驚いたようだった。彼女はにこにこほほえみを浮かべて私にこう言った。「ほら、みんな見てる、私達恋人同士に見えるかな」私は「たぶん」と答えた。でもこの娘はいつもこうだからなあ、ころっと騙されると言うか勘違いするのも無理ないな、そう思った。駅へ着いて別れ際に彼女が言った「これからもずっと、本気だからね」、私は改札を抜けて列車に乗ってからもドキドキしていた。そんなことありました。
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風邪対応 [昔語り]

風邪を引いたのか鼻がむずむずする、それに体が熱い特に顔が熱い。喉は今のところ大丈夫だが目がしょぼしょぼしつつある。これはまずいなインフルエンザではなさそうだが、いや最近は高熱などの特徴的な症状がが出ないインフルエンザもあるそうだ。予防接種もしたしイナビルなどの薬もあるし別にインフルエンザぐらいは怖れることはない。子供の頃はよく学級閉鎖になった、それ以外にも風疹やおたふくかぜ、はしかなどでも学級閉鎖になった。記憶があるのははしかとおたふく風邪にかかったことで風疹は記憶にない。だが、帯状疱疹が出たりするので確実に感染したのだろう。しかし、子供は意外と強いもんで40度の熱があっても平気で遊んでいた、更には冬の川にざぶざぶ浸かって水遊びをしていた。ただ、高熱で泡吹いて倒れたこともあった、全くバカだねえ。インフルエンザは人にうつしちゃいけないと家で寝込まされた、布団を何段も重ねられ汗だくになりながら。天井板の節を何かに見立てたり本を読んだりして過ごした。母が何故か風邪をひくとみかんの缶詰を買ってきた、タマゴ酒とのセットでインフルエンザ仕様の食事だった。扁桃腺が喉を塞ぐくらい腫れるのでこういううものしか食べられなかったせいもあるのだが。今日は会社から帰ったら久しぶりにインフルエンザ仕様食を食べて布団重ねて寝よう。
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散髪 [昔語り]

私は今でも理髪店に行く、1000円とか1500円とかではなく昔ながらの床屋の雰囲気のところ。美容院はどうも苦手だ、顔そりもないし。洒落本に浮世床と言うのがある、浮世風呂の続編にあたる。ようするに江戸時代の二大社交場が銭湯と髪結いだったということだ。それくらい噂話が集まる場所だった、今私が行く理髪店は10年以上住んでいた行徳に行っている。今は千葉ニューに住んでいるから路線も違うし結構距離もある。だけど、店の親父とくだらない話をしながら古き良き時代を懐かしむ。本当にそんな時間のために月1通う。美容院よりは安いがチェーン店よりは高い、それでも納得する価値がある。ご主人が倒れた時いつかはまた再開するのかなと思ってちょくちょく見てみた、地下鉄の窓からやっているかなと見たときにあの赤と青のサインが回っているのを見てすぐに行った。当時はその辺に住んでいたが5年前に引っ越した時も、そして今も。客は確実に減っているのはわかっている、私一人でどうしようもないが、それでも行きます。正月前だから一寸短くして来よう。
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子供たち [昔語り]

郊外のモールにはすでにクリスマスツリーが光っている。マンションのホールにももみの木が置かれ休日には子供たちが飾り付けをしている。なにかと寒々しいこの師走にちょっとした笑顔があふれる場所と時間があるのはいいい。特に子供たちがプレゼントに思いをはせて輝いているのは喜ばしい。私の頃は何ももらえなかったけれどそれでもよかった、ほかの人が何をもらったとか聞いても羨ましくはなかった。今でも中にはそんな子がいるのかもしれない。自分の話はどうでもいいが肩をすくめほろ酔いで歩いて帰る時、マンション前でガラス窓越しにツリーを見ている子供を見るとちょっと寂しくなる。でも、きっと彼にも彼のツリーが光っているのだと思う。
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小さい子のころ [昔語り]

小さい頃台風が来るといつも空を見上げた。空に台と言う字が書いてあるかと思っていたから。世界地図を見ていて川は海から山へ流れていて塩水が流れていると思ってた。狐と狸は本当に人を化かすと思っていた。そんな、5歳児だった私は最初の交通事故に遭った。道の向こうの姉のところへ走って行こうとして郵便局員の単車にはねられた。頭を数針縫っただけだったが、縫われながら「今度は単車に勝っちゃる」と言っていたらしい。また、小学校低学年の時に野球のキャッチャ―をしている時に想いきり頬と顎をバットでぶん殴られた。これもまたどんくさいと言うか、ファーストランナーが走ったので早くボールをとろうと前に踏み出したら左バッターのバットが右頬に命中。骨折こそしなかったが歯がぐらぐら口の中は血だらけ、最悪だった。まったく、あほでドジで手のかかる子だった。おねだりをしなかったのがせめてもの救いだったか。
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金木犀の咲くころに [昔語り]

久しぶりに歩いた遊歩道でこの季節の香りに出会った。金木犀はどうしてあんなにいい香りなんだろう。でも、同時に思い出したのは切ない恋の思い出。忘れていくことばかりの中で、この香りとリンクしたあの思い出だけはどうしても忘れることができない。初めておつきあいした女の子、そしてわずか半年で消えた、私の悲しい性によって。金木犀の花が落ちて風に流されて消えるように。自分が信じられなくて静かにフェイドアウトしようなんて、嫌いになったわけじゃない、好きな人ができたわけじゃない、少しずつ離れて行く毎に好きになっていく。なのに一層離れて行く、あの子をずっと見つめている。そうやってあの子と友達が付き合うように仕向けていた。愚かで残酷で自分を積み落とす行為、苦悶の日々。そんな朝漂う金木犀の香り、ずっと想いと香りが合わさって私の脳裏に刺さっている。
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入院で思ったこと [昔語り]

病院の日々は17歳にとってみれば退屈と言えば退屈だ、リハビリの時間が終われば食事まですることがない。今のようにゲームでもあれば別だが毎日何をしようかなんて思っていた。しかし、病院内を動けるようになると友人ができる。松葉杖でも動けるようになれば時には病棟を抜け出して喫茶店なんかに行ったりする。同じ病棟の同じ年くらいの人たちや看護師や看護学生と仲良くなる。とても重篤な人と話をするようになるし、どちらかと言うと話を聞いてあげる方に回る。みんな辛いのだ、私は日に日によくなる、一方で日に日に絶望に苛まれる人たちがいる。このコントラストはあまりにも重い、人間として向かい合うにも私は経験がなさすぎる。それでも一生懸命に向き合い、少しで心が柔らかくなってもらえるならと思っていた。偽善だとか甘い同情だとかそんな声は切り捨ててひたすら聞くことだけを続けた。そんな中でも別れは突然やってくる。主のいないベットに呆然と立ち尽くすことが何度あっただろうか。人の苦しみはその人でなければわからない、過去の経験や心理分析などしても外から言うのは簡単だ。ただ、苦しんでいる人に心の棘のある部分で接してはいけない、誰にだってそういう棘の部分もあるし逆に柔らかい部分もあるだろう。そんなことを残りの入院期間はずっと考えていた、季節はもう新学期が始まろうとしていた。
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 [昔語り]

あの長い坂道を登って切り通しまで行けば海が見える
輝きの上に影を落としながら
遠く広がる海の上を進む雲
潮の香に優って君の髪の香りが僕を包む
西日の中に立つヴィーナスは
あの日からずっと僕の腕の中にいる
吹き抜ける風は同じじゃないけれど同じ光景がここにある

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陽炎、蜻蛉 [昔語り]

夏の恋は陽炎かはたまた蜻蛉か、熱き地面から立ち昇る揺らめきの中の景色かこの世に本体を置きながら異界の世界への入り口を飛び回る、あの儚き虫のようなものか。それほど身を焼き尽くすほどの恋の経験はないかもしれぬ、しかし胸をこがすような想いは何度もある。不思議なものだが何時も何気なく傍にいる人が夏休みなどで長く会えなくなるとそれは寂しい、そしてその寂しさを恋と実感する、もしかしたらそれは恋ではない場合もあるのだがその時はその勘違いすら気が付かないほど恋に恋い焦がれる。私はこのタイプではない、どちらかと言うと休みの間に知り合った人のイメージを膨らませて勝手に恋い焦がれるタイプだろう。しかも、追いかけるタイプでもないから優柔不断な自分を責めながら振り向いてもくれぬ人に想いを寄せる。ところが、時々何を思ったか行動に出てしまうことがある。止めとけばいいものをと自分ではわかっているのだが止まらない。そんなことが3度ほどあった、ところがそんな時、神の悪戯か想いが通じてしまう事があった。自分ではうまくいかないからこそが夏の恋で、勝手に書いたシナリオが崩壊する。あわてて、ハッピーエンドに書き換えようとするのだが、もとよりそんなものが書けるはずがない。なんだかギクシャクしながら秋冬を迎える、そんなことを何度か繰り返して大人になって行った。
出会いはどこにだってあるけれどやっぱり何か自分から動かないと何も起きない。たとえ一人旅だって別に出会いなんて望んでいなくたって、ふっと自分に風が吹いたら一歩を踏み出せばいい、それだけのこと。陽炎を見つけるのも蜻蛉を捕まえるのも、夏にやってみればいい、ここしかない時間だから。

あきらめないよ [昔語り]

二人だけで秘密の谷川で遊ぶ
銀色の君の手が水面をくぐるとき金色に輝く
僕に向かって冷たい光の玉が放たれる
僕は裸足で逃げ惑う
君の笑顔とお日様が重なって眩しくてしかたがない
腕をとって抱きしめる
蜩の声だけが聞こえる
夏はこの腕の中にある
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